こんにちは。特任助教の松永です。
麻布大学食品生命科学科では、学びの特色の一つである「食の安全」の取り組みとしてHACCP(ハサップ)教育を推進し、食の安全のプロフェッショナルを育成しています。
今回は、日本で起こっている食中毒の実態を紹介します。
1年間に起こった食中毒の状況は、厚生労働省が発表する「食中毒統計」を調べると知ることができます。
早速、最新の2019年のデータを見てみましょう。
食中毒事件の数は、年間1,061件、直近5年間は1000~1300件程度だったので、2019年も例年並みであったことがわかります。
細菌による食中毒が最も多く、次いで寄生虫、ウイルスが続きます。
一方、患者数で見ると、全体で13,018人が食中毒にかかっており、細菌とウイルスを原因とする食中毒患者が合わせて全体の9割以上を占めます。
そしてウイルスを原因とする食中毒の患者数は、ノロウイルス(6889人)がそのほとんどを占めます。
細菌を原因とする食中毒の患者数は、カンピロバクター(1937人)とウェルシュ菌(1166人)が多く、腸管出血性大腸菌を含む大腸菌、サルモネラ、ブドウ球菌なども年間に300人以上発症しています。
では、ウイルスや細菌による食中毒の発生を未然に防ぐことはできないのでしょうか?
実は、これらのウイルスや細菌が死滅する条件はそれぞれ異なりますが、
・基本的な衛生管理(手洗い、調理する人の健康管理、調理場を清潔に保つなど)
・食材と料理の取り扱い(温度管理、十分な加熱調理、調理の工夫など)
をきちんと行えば、多くの場合は発生を防ぐことができます。
そして、これらの衛生管理が確実に実施できるように考えられた仕組みがHACCPです。
もう一つ、データを見てみます。
今度は「どこで食中毒が起こっているのか」に着目して2019年の施設別食中毒患者数を見ると、飲食店がトップで全体の50%以上を占めており、外食シーンで起こった食中毒の患者数が多いことがわかります。
今年から飲食店を含む食品を扱う事業者にHACCPによる衛生管理の実施が義務化されましたが、その背景には、飲食店での食中毒の問題があったのです。
これまでもお店ごとに衛生管理は行われていましたが、従業員の主観や経験に基づいて行われていたり、確実に実施されていなかったりしたことも多く、食中毒発生の原因になっていたと思われます。
一方HACCPでは、食中毒予防のための「衛生管理計画」を立て、それを「実施」して、実施したことを「記録・確認」します。管理する内容は具体的な加熱時間や温度などの客観的な指標であり、その指標の決定には科学的根拠があることが求められます。その結果、衛生管理をすべての従業員が確実に実施できるようになるとともに、「見える化」することができるようになるのです。
より詳しく知りたい方は、厚生労働省からHACCP導入のための手引書が出ていますので見てみて下さいね(飲食店だけでなく、色んな業種向けの手引書があります)。
このようにHACCPの制度化が始まりましたが、全国に約50万店もある飲食店の全てで導入するにはまだまだハードルが多くあるのも事実。HACCPについての正しい知識と実践力を持った人材が求められている今、麻布大学のHACCP管理論を通してHACCPによる衛生管理を体系的に学べば、食品業界での活躍のチャンスがきっと広がるはずです。
気になった方は、資料請求や過去のブログ記事もチェックしてみて下さいね!
参考資料
・食中毒統計資料
・平成28年経済センサス‐活動調査
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松永安由特任助教
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