2020年7月24日

「警告信号にならない痛み」を和らげる【食の機能04】

最終更新: 2021年10月7日

麻布大学 食品生命科学科では、学びの特色の一つとして「食の機能」に関する教育と研究を積極的に行っています。本日は食の機能分野から、食品生理学研究室の武田守教授に研究内容をご紹介いただきます!


皆さん, こんにちは。食品生理学研究室教授の武田 守です。

私達の研究室では、主に果物や野菜などの食品由来の化学成分ファイトケミカルの持つ疼痛緩和作用(痛みを抑える作用)を個体から分子レベルまで神経科学の手法を用いて研究を行っています。

これまでに、ブドウの種子に含まれるレスベラトロール、大豆に含まれるイソフラボン、ブロッコリーに含まれるルテインなどの食品成分に疼痛緩和作用があることを発表しました。

このブログでは、このような「補完代替医療」に役立つ研究成果の一部をご紹介致します。

皆さんは、頭が痛い、お腹が痛い、歯が痛い時 ・・・ そのような時どうしていますか? 痛み止めの薬を飲むのではないかと思います。でも、副作用を考えると頻繁に薬を飲むのは良くないですよね。もし、食品に含まれる成分で痛みを抑えることができたら、薬に頼らず安全性の髙い治療「補完代替医療」が可能になります。

皆さん 「医食同源」という言葉をご存じでしょうか?「病気の治療」と「ふだんの食事」も共に生命を養い、健康を維持するためである点においては同じという意味です。人類は古くから植物成分を薬として使用してきました。例えば、歯医者さんが治療に使う「局所麻酔薬」は南米原産の「コカ」という植物から精製・合成されました。

このように痛みを取り去ることは、医療という視点からは大事なことですが、痛みを生まれつき感じない「先天性無痛症」の人は痛みを感じないため、度重なる骨折などで、関節変形しており寿命が短いなどの特徴があるそうです。痛みの存在は患部を安静にし、私達を病院で治療受ける動議付けになります。したがって、痛みは「警告信号」すなわち、身体を傷つける可能性のあるものより身を守る大事な役割ととらえることができます。

ところが、「警告信号にならない痛み」もあります。 例えば、「やけど」や「関節炎痛の時の痛み」や「座骨神経痛」、「癌性疼痛」などがそれに当たります。これらの痛みはもはや警告信号の役割を果さないため、できるだけ速やかに取り除くことが必要です

多くの抗炎症性鎮痛薬は痛みのもとになる「プロスタグランジン」の合成を抑えることで炎症の痛みを静めることがわかっています。でもこの薬は痛みを抑えるとともに胃などの消化管におおきな負担をかける副作用がわかっています。

最初に書いたように、当研究室ではブドウの種子に含まれるレスベラトロール、大豆に含まれるイソフラボン、ブロッコリーに含まれるルテインなどの食品成分は痛みのもとになるプロスタグランジンの合成酵素(シクロオキシゲナーゼ-2)を阻害することで、動物実験レベルで痛みを脳に伝える神経細胞の興奮を和らげることを発表しました。

全て、これまで、当研究室に卒論学生や大学院生として所属し、現在は社会の第一線で活躍されている卒業生の研究成果です。研究成果が気になる方は食品生理学研究室のラボナビのニュースや、研究日記Labo Diaryで詳しく紹介していますので、ごらんください。

これらの研究は、西洋医学に頼らない、食品を用いた補完代替医療に貢献できる研究であり、副作用のない化学成分で”鎮痛薬や麻酔薬”開発に関与しております。

これまでの疼痛抑制効果の判明した食品成分は以下のようです。

興味のある方は、是非、私達の研究にご参加ください。

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